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概要

国士舘史研究年報第7号

国士舘史研究年報2015 楓?24日付、教科書をローマ字化する必要がないことを正式に通達した。ところが、ローマ字化に執着していたホールは、ローマ字による言語改革を一九四六年三月初旬に来日する米国教育使節団に勧告してもらうために、密かに準備を開始する。同年三月四日には、「暫定的研究?言語改革の研究」を作成している。ここでホールは、「ポツダム宣言」の一節、「日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スベシ」の条項を引用し、言語改革を民主化の遂行に役立てようとしている総司令部の目的に巧みに合致させようとしたのである。しかし、ニューゼントは、ホールの担当者研究に対して、教育使節団に対してローマ字問題を示唆することは構わないが、結論は使節団に任せるよう指示するきびしい内容の覚書を出した。さらに、ニューゼントは教育使節団へのオリエンテーション講義においてはいかなる結論を出すことも、また提案することもきびしく禁止したのである。かくして、一連の改革の動きに終止符が打たれたのである(9)。その後、一九四六年三月五日?七日に米国教育使節団が来日する。この使節団は、占領下の教育改革について勧告するためGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に招かれて来日した教育家の使節団である。七日には、早速、教育使節団の第一回総会が開かれた。そこにおいて、帰国中のダイクCIE局長に代わり、局長代理としてニューゼントが挨拶している。そこに次のような一節がある。我々は日本にでき合いの外国の教育制度を強制することは出来ない。我々が導入するいかなる制度も日本の生活様式に適合したものでなければならないのである。我々はその生活様式が民主的なものに修正されることを望んでいる。〔中略〕いかなる場合もそれが単なる実験の場と考えてはならないのである。なぜなら、我々がいま着手している改革は数年後の日本の教育にそのまま反映されるからである( (1 (。すなわち、日本の生活様式に適合したものを長期的に、慎重に推し進めんとしていることがわかる。また、日本に合った民主化政策を採らんとしていることも伝わってくる。これは先にみた「日記」の記事からも知れるように、知日派であり、親日的な人物であったといえよう。