本学の17万人以上にのぼる卒業生は、社会に出てからさまざまな世界で活躍を見せています。この企画では、社会で奮闘する卒業生に国士舘で学んだことや現在の目標?夢などをインタビューし紹介します。
2021年12月13日取材
法学部に「現代ビジネス法学科」が開設されたのは平成13年。その第1期生として同17年に卒業し、弁護士として8年目を迎えたのが吉直達法さんだ。
本学大学院法学研究科を同19年に修了後、明治大学の法科大学院で学んだのち2回目の司法試験で合格。1年間の司法修習を経て、現在は都内に個人事務所を構えている。
出身である鹿児島県の工業高校に通っていた吉直さんを、法学部へと結び付けたキーワードは「人」だった。
インターネット黎明期といわれる頃に始めたチャットは、中学生だった吉直さんの世界を広げた。ウェブで見知らぬ相手と言葉を交わす中、「モニターの向こうの人が何を考えているのか、人の心の中を知りたいと思うようになりました」。
当初は心理学を志望して臨んだ塾の進路相談で、人に興味があるならと講師に勧められたのが、意外にも法学部だった。その助言が吉直さんの人生を決めた。
「ひっかかり」をほどく
現在、吉直さんが扱う案件は多岐に渡る。遺産、債権、離婚問題、国選弁護も含め民事?刑事問わず幅広く携わる中で折に触れて思い出すのは、司法修習時代に先輩弁護士にかけられた「寄り添いすぎない」という言葉だ。
「同調して一緒に悩んでも問題は解決しません。最終的には依頼人自らが納得する結論を得られるよう、冷静な視点で支えるのが弁護士の仕事だと考えています」。
そんな中、職務に最もやりがいを覚えるのは、依頼された案件に適用する法律に対して、それまで気づかれなかった「解釈」を見つけ出すことだと吉直さんは言う。
「仕事を進めていく中で、解釈の余地などひっかかる部分があれば、関連する法を掘り下げて調べていく。すると今まで知らなかった法解釈にたどり着くことがあります」。
真実を追求する作業は「過去の判例や文献をすべて洗い出して検討します」と言うとおり、多大な労力と時間を要する。しかし「ひっかかり」を見出し、ていねいにほどくことが、依頼を適切な解決へ導く手がかりになる。
「依頼人の利益が最大になるための努力は怠らない」と話す吉直さん。必要とあれば自分の足で歩いて調査をすることもあるという。
原点は国士舘での学び
真実の追求に注力する弁護士としての原点は、法学部時代に所属していたゼミにあったと吉直さんは振り返る。学生が各自興味のある事例を調べて発表する形式のそのゼミでは、毎回90分間、少数の学生同士でひたすら議論を繰り返した。
国士舘で得た、話し合いを重ねながら本質に迫る経験は、個人事務所を構える上でも強く影響している。単独で進める業務が多いからこそ、多忙な中でも意識的に同業者の集まりや勉強会に出席し、情報収集や思考のアップデートに努めているのも、そのひとつだ。
「できるだけ多くの人と話す機会を作り、自分の仕入れた情報が本当に正しいのか、確認?検証することが重要だと実感します」。
大学を訓練場に
本業の傍ら、後進にその意義を継ぐべく、本学法学研修室(法曹などを目指す学生有志の集まり)や法学部伝統行事である模擬裁判で、卒業生として学生への指導の手伝いにも携わっている。
「法学研修室の合宿にも同行して指導するのですが、難しいですね。学生らは自分の考えは持っているのですが、自主的に発言することに慣れていない。もっと彼らの言葉を引き出したいです」。
この仕事を続けていく上で、人との交流でしか得られないものがあると吉直さんは強調する。
「法に携わるのなら、机上の勉強だけでなく人と議論をしなさい、と法学研修室の学生らにいつも話しています。自分の考えや持っている情報を言葉にして伝え、それに固執せず指摘を受ける。そして逆の立場で傾聴して指摘する。この積み重ねは、学生のうちに経験しておくべき最大の学びです」。
司法試験は自分との闘いだと思われがちだが、その先にある職務では、相手の主張に相対し、現実的な視点で依頼者を説得することも少なくない。
「大学やゼミをその訓練場に使ってほしい。人との関わりを積極的に持つことが、この先に必ず生きてきます。キャンパスで仲間といろんな話や情報交換をして、自分の可能性を広げていってもらいたいですね」。
プロフィール
氏名:吉直 達法(よしなお?たつのり)
生年月日:1982年10月1日生まれ(39歳)
出身学部:
法学部現代ビジネス法学科 2005年卒業
大学院法学研究科修士課程 2007年修了
出身地 :鹿児島県鹿屋市
吉直法律事務所
東京弁護士会所属